行政契約 民法の適用性を問われる逗子中学校の借地契約
11月1日、逗子市立逗子中学校の敷地の一部にあるテニスコートに隣接する国有地の木が倒れ、テニスコートの外回りのフェンスをなぎ倒し、テニスコートへ落ちました。幸い怪我人はいなかったのですが、生徒は12月3日現在までテニスコートを使用することができていませんでした。今も、テニスコートを囲むフェンスは倒木により、壊れ修復されていませんが、倒壊した樹木は12月3日一日作業で撤去されました。学校は、すぐに土地所有者である管轄の財務省に連絡しましたが、撤去作業に要した日数は1か月程かかっています。逗子中学校はあまり知られていませんが、学校の敷地は国有地で、国と有償貸付契約を締結しています。その賃料は年額2300万程とかなり高額、ひと月あたり約192万円です。
さて、この使えなかったテニスコートもう少し早く撤去できれば、生徒の部活動にも支障が出なかったのではないかと思うのと同時に、1月以上、使用が制限された場合、逗子中学校の国有地の借地契約に基づく、借地料はどうなるのかという問題があります。例えば、一般に、民法上で駐車場の賃貸借契約をしている場合、なぎ倒された木で駐車ができず、使用できなければ、その分の賃料は勿論のこと、他に使用していた駐車場代などは、貸主の保険等の負担で賃料の減額と損害賠償請求が可能だと思われます。しかし、この逗子中学校用地が契約している国有財産有償貸付契約書の内容を見ると、貸付料という契約条項に、契約不適合部分の存在を理由として貸付料の減免請求、損害賠償請求を行うことができない。また、契約不適合部分の修補を自ら行った場合において、支出した費用(民法第608条に規定する必要費及び有益費を含む)を甲(国)に償還請求しないものとする。などとかなり強引な貸付内容を契約していることがわかります。ただし、修繕の期間中、乙(逗子市)の使用収益が制限される場合においては、貸付料の取り扱いについて甲乙協議されることができるものとする。となっています。このように民法が引用されているのは、行政契約でも一般的な契約行為は民法上の適用をするという考えがあります。
今後、契約条項に基づき、協議がされることを期待するものですが、本来、義務教育という国の責務である教育行政において、無償貸付が妥当であり、このような行政契約を締結することが、本市の財政面においても負担の重い歳出になっていることは確かです。これを機会に、本契約は、契約期間は平成21年から30年間、貸付料は3年毎に適用されることになっていますが、契約条項と貸付料を見直すきっかけにすべきではないかと考えるところです。
民法第608条(賃借人による費用の償還請求)
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。