何が失われた30年だったのか 政策論争から垣間見る市民の生活

衆議院選挙が終わりました。今回の投票結果も議席数は自民党の単独過半数超えで、旧態依然の結果のままであると言えると思います。安倍内閣から菅内閣、そして岸内閣も基本軸は変わっていません。国有地売却、公文書の改ざん、政治と金の問題の説明責任に対し、国民が納得している訳ではないはずです。ただ、これなら成功するに違いないと納得の行く経済政策を見出せる力量のある政策提案にまでは行き届かず、それならば現状維持と消極的選択をされたような選挙だったのではないかと個人的には思います。

今回の衆議院選挙の中で、野党が打ち出した消費税減税や消費税廃止にも目が留まりました。「国民の可処分所得が減ってみなが苦しんでいる」という声も上がっていました。では、消費税のみが可処分所得の減少なのでしょうか。国民年金の基礎保険料は90年代月10500円でしたが、現在の保険料は月16610円です。1989年に導入された消費税は3%でしたが、1997年に5%、2014年に8%、2019年には軽減税率制度が実施され10%と上がりました。長期間で見れば、可処分所得が下がったというのは、消費税や社会保障費の増加が要因していますが、それだけではありません。現在、日本の平均賃金はG7で最下位です。実質賃金はOECD諸国が伸びている中で、日本のみが下がり続けています。注目に値するのが、日本の非正規雇用の労働者の割合です。1989年は2割ほどでしたが、現在は38%を超えており、2倍に増えました。2000年代以降、被用者の社会保険料を引き上げためその半分を負担している企業は、人員を正規雇用から非正規雇用に置き換えたので、非正規雇用の人員が倍増しました。こうした流れが国民の勤労者全体で平均賃金の低下を生じさせたのだと思います。さらに消費支出の減少を招き、物価低迷へと繋がり、コストカットを常に強いられる企業が浸透したのが、この失われた30年です。

確かに、消費税は所得の低い人ほど負担が重くなるため、応能負担の原則の趣旨に反しているとされています。しかし、問題は消費税のみではないように思います。日本全体で雇用が安定したものとして培われ、実質賃金を諸外国並みに、引き上げて行かなければ、より給与水準の高い外資企業へと、優秀な人材の流出につながってしまいます。今以上に、国際企業間で賃金格差が生まれ、国際競争力は削がれていきます。安倍政権は消費税増税と法人税の減税を実施し、資本主義経済のトリクルダウン効果を狙いましたが、実質的には国民の間で経済格差が生じ、生活に困窮する弱者層がクローズアップされました。市民の生活を真に豊かにするために、雇用の安定と可処分所得の増をどう導き出すのか、経済政策の置かれた現状を冷静に分析し、提案を打ち出していくべきものだと考えます。