問われる自治体の権限 辺野古サンゴ移植から

 辺野古のサンゴ移植訴訟は、沖縄県が国からサンゴの移植を許可するよう指示されたのは、違法だと訴えた裁判で、最高裁は訴えを棄却し、沖縄県の敗訴が確定しました。敗訴したもののこの裁判の5人の裁判官のうち、2人の裁判官は反対意見を述べています。この裁判後、サンゴ移植は許可条件を満たしていないとし、許可権限を持つ沖縄県がサンゴ移植許可の撤回をしました。これを行政行為の撤回といいます。行政行為の撤回とは、行政庁(ここでは沖縄県)が、適法に成立した行政行為について、その後の事情の変化によりその行為を維持することが適当でなくなった場合に、その行為の効力を将来に向かって失わせることで、つまり許可はその時点から無効になります。
 これを受けて、防衛省が沖縄県のサンゴ移植許可撤回を行政不服審査法による審査請求を農林水産省に審査請求し、あわせて許可撤回の執行停止を申立てました。現在、審査中となっています。この後の手続きは、審査庁が処分庁の上級行政庁または処分庁のいずれでもない場合、処分庁の意見を聴取した上で、執行停止をすることができる(行政不服審査法25条3項)ことになっています。また義務的な執行停止をする場合でも、処分の失効、手続きの続行による生じる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査庁は執行停止をしなければならない(同法25条4項)。とあり、沖縄防衛局の主張に、執行停止の緊急性がないことや、許可撤回の沖縄県の判断である意見書の妥当性をどこまで尊重するか、農林水産省の審査結果が問われることになります。

 辺野古基地建設に至っては、これまでにも県に対する国の行政機関内での不服審査請求及び審査が行われてきました。しかし、いわば農林水産省と防衛省は、身内どおしであり、そもそも行政不服審査法を適用することに違和感を持たずにいられません。行政不服審査法の1条の目的は、公権力の行使にあたる行為に対し、国民が簡易迅速かつ公正な手続きの下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることで、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする と述べられています。
 つまり、国の行政機関が適用する法ではないことに加え、農林水産省が防衛省の主張を認めるのであれば、地方自治体の許可権限は、国の行政行為に対し、権限が及ばないと判断したことになります。それは、地方自治体と地方分権を軽んじる姿勢そのものであると言わざるを得ません。