台湾有事を北東アジアの平和構築から考える 神奈川ネット学習会から 

6月25日(金)神奈川ネットでは、特定非営利活動法人ピースデポの湯浅一郎さんを迎え、オンライン学習会を開催しました。『「台湾有事」を北東アジアの平和構築から考える』と題した学習会の内容は、米中対立構図という虚構としての新冷戦構造に巻き込まれていく現状から以下の視点を取り上げました。①台湾有事に触れた日米首脳共同声明②安保法制化で進む日米軍事一体化と中国包囲網を担う琉球弧一体(佐世保から沖縄、南西諸島)の自衛隊ミサイル基地配備計画です。まず、①4月16日日米首脳共同声明は、日米同盟に基づく、軍事力強化の合意を羅列したものであること。特に日米両国は「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」との声明文は、台湾について50年ぶりに言及し、日中共同声明の建前を放棄したこと。しかし、6年後の台湾有事を意図するものではなく、中国を警戒し、敵をつくることで、同盟国を巻き込むための新たな冷戦構造を作ろうとしている。その結果、米国自身が軍拡せざるを得ず、同時に同盟国に軍事費と軍事体制を求めている。②安保法制化で進む日米軍事一体化と沖縄諸島の自衛隊のミサイル基地化は、専守防衛を越える既成事実を作ること、例として、護衛艦「いずも」の空母化、さらに昨年4月30日から72日間、インド洋から西太平洋に至る海域での日米共同演習を実施したことで、中国からみれば、自衛隊が米軍の一部として、南シナ海の制海、制空権の確保に関与しているものとみえる点。軍事力のプレゼンスにより影響力を行使している、砲艦外交の始まりと言え、非常に危険である。さらに、中国包囲網を担う琉球弧一体に自衛隊ミサイル基地の配備計画があることを取り上げられました。
こうした軍事力による安全保障の思考に基づく動きを、「軍事力による安全保障ジレンマ」と呼び、これに陥っては止めどのない軍拡と終わらない対立の悪循環にはまり込んでいく。
今、まさにそうした動きに騙されてはいけないとし、別の筋道を示されました。それが、
1982年のパルメ委員会が提唱した「すべての国は安全への正当な権利を有する」という概念を共有する「共通の安全保障」の原則に基づいた外交政策の方法論です。実現策として北東アジア全体の平和ビジョンの構築が急務となり、朝鮮半島の非核化がそのきっかけになるとのことでした。朝鮮半島の非核化によって朝鮮半島非核兵器地帯条約を作り、米国が安全保障を約束し、韓国が米国の「核の傘」から抜け、中国、ロシアが消極的安全保障を次いで約束し、日本が加われば、世界で6つ目の非核兵器地帯条約を作る構想が浮かびあがると。バイデン政権においても前政権の米国が北朝鮮に対する安全保証を約束し、朝鮮半島全体の非核化に南北で取り組むとした、シンガポール合意を踏襲しており、平和ビジョンを構想していくことは十分ありうると語られました。本来、非核三原則をもつ日本が平和ビジョンのイニシアティブを取るべきである。そのために世論を巻き込み、国民レベルで、政府に対し、声をあげていくことの意義を示されました。学習会を通じ、虚構としての新たな冷戦に惑わされることなく、軍事力によらない安全保障体制を生み出す取り組みは、実現できるのだという希望が見えてきました。