奨学金過払い分不当判決から 保証人と連帯保証人の相違

 新聞報道されましたが、5月13日、札幌地裁において、日本学生支援機構が半額の支払い義務しかない保証人に、全額支払いを求めていた問題で、半額を超える請求は、債権者の不当利得であると認め、保証人への返金を命じる判決が出ました。
この裁判は、連帯保証人を含め、複数の保証人がいる場合、各保証人は分別の利益が適用され、返済義務は債務の半額であるとの原告側の主張を認めました。分別の利益とは、保証人の数に応じた債務負担額の分割があることを指します。
ここで注目したいのは、原告の保証人には分別の利益があると知らずに、連帯保証人のように、全額返済の債務義務があると受け止め知らずに返済したこと、また機構も保証人に全額の債務の請求していたことです。判決は、保証人が主張するまでもなく、分別の利益の効果を生じ、知らずに(善意)返済しており、返済は無効であると結審しています。これにより、債権者側の不当利得の返還請求が認められる結果となりました。

 そこで民法上の保証人と連帯保証人の性質と相違を整理しておきます。
まず、保証債務とは、主たる債務と同一の給付を目的とするするもので、債務の一部のみの保証をすることができ、主たる債務より重い内容の債務を定めることはできません。また安易に保証人を引き受ける風潮を戒めるために、書面によらなければ保証人の効力は生じません。さらに債務者に時効が完成したときは、主たる債務者が時効の利益を放棄しても、保証人はこれを援用し、債務を免れることができるなどの付従性があります。そして、保証人は催告・検索の両抗弁権を有しています。催告の抗弁権とは、債権者が保証人に先に請求してきた場合、主たる債務者に先に請求するように主張できる権利です。検索の抗弁権とは、主たる債務者に弁済の資力のあることを証明して、この財産に対して先に執行するように主張できる権利です。連帯保証人はこれに対し、分別の利益はなく、催告・検索の抗弁権を有しません。

 一般的に、金銭消費貸借などの契約行為には連帯保証人を付ける場合が多く、保証人との違いが知られておらず、自分の債務であると誤信してしまうケースは多いと推察されます。奨学金を借りる大学生、大学院生の割合は約半数となっており、奨学金返済額の平均は288万円。親が連帯保証人で自己破産してしまうケースもあり、奨学金制度そのものの在り方を議論すべき問題であることは間違いありません。